世界はまだ君を知らない



「札幌店って……全店の中でも売り上げ1位の店じゃないですか!」

「そう。しかも仁科店長はそこの個人売上トップだ」

「すごっ!そんな人がうちの店に!?」



そうだ。言われてからようやく思い出すけれど、札幌店といえば全国にいくつもある店舗の中で、売上1位の店。

店トータルはもちろん、スタッフ個人の成績も高く、接客態度も超優秀と言われている。



対してこの新宿店は、売上は額で見れば低いわけではないけれど『立地と規模で見ればもっと売らないと』と、たびたび本社に突かれている。

まぁ、元いた馬場店長が緩い人だったから、その下で育った私たちスタッフも売上意識が緩いというか……。



あれこれと話していると、仁科さんはキリッとした目つきで私たちを見る。



「この店舗の状況は上から話も聞いているし、俺も実際何度か抜き打ちで来ていて把握してる」

「え!?抜き打ち!?」



私たちのまとめ役である上坂さんですら知らされていなかったのだろう。驚く彼に仁科さんは表情を一切変えず頷く。



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