きみのためのプレゼント
『初めまして。同い年で陸上部ということで仲良くしたいと思い、フォローさせてもらいました』



その【ナナ】からのメッセージを皮切りに私たちは数件のメッセージのやり取りを交換し合った。


すると、住んでいる町が近いことが判明。元々、同い年だということもあってか、一気に距離が縮まり、一ヶ月後には私から直接メールでやり取りをしようと誘った。



【ナナ】とは、毎日本当に他愛のないメールのやり取りをした。お互いの学校生活や部活。たまにはテレビの話。【ナナ】は、野球が好きで好きな選手がいると話してくれたこともあった。


私は陸上以外にあまり興味がなかったから【ナナ】から聞く話が新鮮で、携帯が鳴るのが楽しみで仕方なかった。



携帯の住人。私の中で【ナナ】はいつしかそう、認識するようになった。だから、たまに返事が来なかったりすると、心配したり。


でも、不安に思っていると、それが伝わったかのように『遅くなって、ごめん』と前置き付きのメールが届く。


人に合わせて、無理に一緒にいることは苦痛だけれど、【ナナ】のような友達ならいい。そう思えてきた。


でも、それは【ナナ】が良くも悪くも携帯の住人で私は実際の【ナナ】を知らなかったから。
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