きみのためのプレゼント
「うん。沙織に言われて気づいた。そして、何をしようかって考えたら、やっぱり沙織のことだった。自転車に乗れるようになって二人乗りをして、沙織とたくさん出かけたいって。結局、そんなことしか思いつかなかった」

「そっか」


「だけど、それじゃダメだから俺は、沙織から離れようと思う。沙織も自分でいろいろと頑張ってるし、岡部さんだっている。だから、俺がいなくても沙織はもう大丈夫」

沙織は、もう大丈夫だと言ってくれているのに、それがなんだかとても別れの言葉みたいで胸を締め付けられた。だけど、それが翔平の決めたことなら仕方ない。笑顔で送り出してあげよう。少しだけその言葉に俯いた顔を上げた。

「でも、俺が沙織と離れて、自分のために達成したい目標を達成できたらそのときは、俺の話を聞いてほしい。伝えたいことがあるんだ」

真剣な眼差しに目を奪われる。これは別れじゃない。挑戦だ。彼が彼自身の今の境遇を受け入れるための。ずっと考えていた。翔平の境遇はなんなのか。きっとそれは雁字搦めになって、その場から動き出せない私の境遇。

だから、一歩彼は彼なりに踏み出そうとしている。

「うん、わかった。楽しみにしてる。翔平のための目標が見つかって、それを達成することが出来る日を。あっ、でももし、それが卒業してからだとしてもちゃんと連絡してよ」

「大丈夫。そんなに時間はかからないよ。全然思いつかないわけでもないから」

了解と私の言葉で、私たちは笑顔で離れることにした。自分たちの実家の電話番号と住所だけは教え合って。

そのときは、私も伝えるよ。
溢れて止まらない、君への気持ちを。
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