きみのためのプレゼント
体育祭は歓声に包まれて終了。男子はみんな茶化すけれど、女子からは悲鳴。


それもそうか。犯人はこの人。私の隣でヘラヘラ笑みを浮かべている男の、あの一言だ。


「藤野沙織さん、俺と結婚してください!」


付き合いもすっ飛ばして、まさかの公開プロポーズ。当然、辺りは騒然。言われた私は、唖然。でも、翔平だけは満足げ。


当然後夜祭は注目の的になると私たちは人の目を盗んで、逃げ帰ってきた。花火はもう二人で堪能したし、ちゃんと誓うならあの場所がいい。


そうして、やってきたのは、もちろん入れ替わった浦賀川の階段。でも、ここに来る前に、私は本当の未練を晴らすことができた。


「悪かった。お前のことを軽視していた。だけど、お前の努力は、本当にすごいと認める。よく、頑張ったな」


帰り間際、溝上先生が私たちを呼び止め、そう言ってくれた。聞けば、翔平は速くなる秘訣や走り方を溝上先生に習っていたらしい。


だから、あの言葉は溝上先生が翔平に言った言葉だけれど、溝上先生のその言葉は入れ替わる前の私の一番、欲しかった言葉だ。


その言葉を聞けただけで、もう十分。
入れ替わる前の私も報われたんだ。



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