きみのためのプレゼント
「・・・大丈夫?」


藤本くんを急かし、エレベーターに乗り込んだ。乗り込んだ後も彼は無言。だけど、表情からは怒りを感じる。だからか、私からさりげなく声を掛けてみた。


「俺さ、自分がああいう風に言われても、軽くあしらえる自信あるんだ。慣れてるし、自分のことだから。でもさ、今は本気でヤバかった」


そう放つ藤本くんの声は、いつもよりも低い。本気で怒っていることがわかる。


さっきから『怖い』と思うのは、自分がこれからそういう風に見られるということを実感したからなのか、それとも時折見せる藤本くんの別の顔なのだろうか。

「人間ってさ、すぐに形にはめたがるよね。でその形にはまらなければ、『弱者』だと認識し、大勢で攻撃をする。皮肉だよね」

「そ、そうだね」

彼が、まるで別人に見える。それは、今まで理不尽な差別を受け続けていたことへの怒りからくるものだろう。私はどうだっただろうか?困った人に手を差し伸べてあげていたのだろうか。

いや、自分には関係がないし、優遇されているくせにと相手を蔑んでいた。私だって、今まではあの男子や先生と同じようだった。

自分が、彼の立場に立ってやっとわかった。
世間は思ったほど、優しくはないと。


「おはよう」


エレベーターを降り、私の教室へと藤本くんが車椅子を押してくれた。少し、怯えていたのが伝わったのか、それから藤本くんは、いつも通り優しい口調で「大丈夫?」と心配してくれた。


三階の端から二番目が二年二組、私の教室。その横が、二年三組。藤本くんの教室だ。私の席は窓際の一番後ろ。


ちょうど校庭がよく見える場所で、授業中、あの場所からこっそり溝上先生を見ていた。
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