きみのためのプレゼント
でも、この気持ちはきっと、あのメールがきっかけに加速したんだ。前園光のメール。あのメールがなければ、こんな『恋』という感情知らなかった。


それと色々と日々聞かされたハルの恋話。悔しいけれど、ハルが話す三浦先輩への気持ちと自分の気持ちが一致した。


彼のことを思うと苦しくなったり、嬉しくなったり、切なくなったり、ドキドキする。


だから彼の口からもう前園光のことなんて聞きたくない。『ひかる』という名前を聞かされるのも辛い。私は、藤野さんなのに。名前で呼ばれることもないのに。



花火の時間が近づいて、前売り券を買っていた人たちがドンドンと観覧車に並び始める。私たちも同じように列の後ろへと並んだ。


観覧車の下に車椅子を置かせてもらい、彼がまた、お姫様だっこで私を観覧車へと乗せてくれる。


後ろのカップルが私もやってとせがむ声が聞こえるが、さすがに車椅子を非難する人たちはここでは誰もいなかった。観覧車の中でも、私たちは横並びで座った。少しずつ上っていく観覧車。


そして、それはゆっくりと止まり、中の照明も全て消えてしまった。それと同時に握られた私の手。暗闇だから、誰も見ていないからと私もそっとその手を握り返した。


「・・・俺が笑顔でいる理由、それはね・・・」


「待って。やっぱりいい。聞きたくない」


花火が始まる数秒前だったと思う。彼が切り出したのは。そして、私がそれを聞きたくないと言った直後、ドーンと大きな音を立てて花火が打ち上がった。


その迫力に目を奪われる。こんな至近距離で花火を見るなんて初めて。
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