きみのためのプレゼント
「すごいね」


「うん。とても迫力があるし、綺麗だね」


二人ともそんな言葉しか出てこなかった。色鮮やかな花火は周囲の電灯も全て消されていることもあり、とても鮮明で眩しい。そして、とても美しい。


「結局、話せなかったね。すごい迫力だったし、話どころじゃなかったね。で、話なんだけど、どうしよう。遅くなっちゃったね」


観覧車の中で見る花火にすっかり目を奪われ、花火が終わり、動き出してから藤本くんが思い出したように話す。聞きたくないからこれで解散でいい。そう言ったのに、彼は少しムッとして言葉を続けた。


「俺、誰にも話したことないこと、今日、話そうって覚悟してきたんだ。そんな態度取られたら腹立つんだけど」

「だって、聞きたくないの。どうせ、前園光の話でしょ?そんな話、聞きたくない。藤本くんの口から彼女の話なんて聞きたくないの!」

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