腹黒エリートが甘くてズルいんです
今度は、同じ会社の仲間を使って。
皆の前であたしを狙っているなんて言わせて。


……見損なったよ。
本当に、そんな人だと思わなかった。思いたくなかったけど、ここまでされたらあたしだって気づく。


悔しい。

あんなに素敵な人だったのにな。
20年振りに再会出来たことも、単純に嬉しかったのになぁ。


なんで、暇潰しに騙したりするわけ?


鼻の奥がツンとなる。視界がじわじわとぼやけてくるのが分かる。


「……仲田!」


不意に背後から声を掛けられ、涙が引っ込む。ヤバイヤバイ、あたし今きっと泣きそうだった。でも、すぐにまた涙が出そうになる。

振り返らなくても、誰に呼ばれたか、分かってしまったから。

固まったように動かない身体を、出来ることなら縮めて消してしまいたい。


「……仲田」


動かないあたしに、もう一度声が降り注ぐ。

ずっと聴きたかった声は、脳内で何度も再生していたこの1ヶ月のものよりも、実際に耳にしてみたらうんと深くて、温かい。
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