腹黒エリートが甘くてズルいんです
「あいつさ、イケメン扱いで、社内外で結構派手な噂とかあるからさ、お前は4月からのこともあるんだし、あんまりお勧めはできない……って俺が言うのもなんだけど」


プチ


何かが切れた音がした。


「……って……」


「ん?」


久し振りに見る酒井くんの整った顔。そりゃあ中学生の頃に比べちゃうと、歳をとって、いい感じに味が出ちゃっているけれど。

とにかく、この人はきっとあたしの知っている酒井くんじゃないんだ。


もう一度、声を張って言う。


「ふざけないで、って言ってるの!」


驚いて目を見開く酒井くん。
あたしだって、人前でこんな声を出す自分に驚いているけど。


「どうしてまだ続けているの? 今度は自分の会社の人を巻き込んでまで、こんなことするの?」


酒井くんが、あたしを見ている。表情はほとんどない。
戸惑っているようにも見えたけど、この期に及んでなんでそんな顔をするのか、と、問いただしたいくらい。
それが少し気になるけれど、もう止まらない。
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