腹黒エリートが甘くてズルいんです
ぐっと腕を強く引かれ、また菅生さんの顔が近付く。

怖い。強い。


さっきだって、酒井くんに強く手を引かれたけど、こんなのじゃなかった。
強かったけど、違う。


耳元で菅生さんが囁く。さっきから香る、ムスクの香りが濃くなる。


「もったいぶるの止めなね、冷めるから。ごちゃごちゃ揉めるなんて処女でもあるまいし。イケメンにご指名されたくらいで、ホイホイついてくるんだもん、ヤる気なのは莉緒ちゃんも同じでしょ?」


サァーッと、血の気の引く音がした。

この口調、そういえば飲み会の最中にも聞いた。冗談だと思ってたけど、いや、本人も冗談だと笑い飛ばしてたけど、こんな口調で、なんか黒いこと話してた。
あれが本性だったんだ。
なんで気づけなかったんだろう。


笑顔が何か引っ掛かるのは、イケメンだからじゃない。この人の、こういう本性がきっと滲み出ていたんだ。


「……もしかして、莉緒ちゃんって、酒井のことが好きなの? こんな時にわざわざ名前出してきて」
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