腹黒エリートが甘くてズルいんです
ふふ、と笑った気がする。近すぎて、その顔を確認することはできないけど、絶対笑ってた。なんなのこの人。


「す、好きとか、そんなのじゃないです」


何とかして逃げ出そうとするのに、全然身体が動かない。

「あ、タクシー来た。乗ろう」


確かに、向こうからヘッドライトが強い光を放ってこっちに向かってくるのが菅生さんの肩越しに見えた。


ぐ、っと身体ごと持ち上げられそうになり、思わず手足をバタバタする。


「やめて! 乗らない! 離してっ!!」


駄目だ、これ乗ったら絶対まずい。
酒井くん、疑ってごめん。
あいつは止めとけ、ってあんなに真剣な顔で言ってたのに。

この人、本当に駄目な人じゃん。

雰囲気がガラッと変わって、さっきとはまるで別人だし。

「はい、タクシー来た来た。あんまり騒がないで、警察沙汰とか面倒でしょ?」


いや、あたし全然面倒じゃありませんけど?!


「困るのは、菅生さんですよね?! 捕まりますよ、これ!」
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