腹黒エリートが甘くてズルいんです
「は? 知らねー。そういや、昨日の飲み会でも菅生がやたらお前が同業になるとかなんとか言ってたな、なんか俺それどころじゃなくてあんまり聞いてなかったけど」


まさか……まさか。一応確認の意味を込めて聞いてみる。


「酒井くんが、『暇潰しに騙してたんだぜ』とか報告してきたときから言っていた、あたしの4月からの新生活って……まさか、あたしが誰かとけっ……」


あたしの問いかけに、スクロールする手を止めて酒井くんがこっちを見る。


「だから、仲田が結婚するっていうから、そのこと。だから精一杯悪ぶって諦めようとしたのにお前が菅生なんかの魔の手にあっさりかかるから……思わず路上で叫んじゃったじゃん?」


確かに。
飲み会を抜け出した最中の喧嘩のようなやり取りのあと、逃げ出すようなあたしの背中に、酒井くんが何かを叫んでいた。


「あれねー、全然聞き取れなかった」


「マジか……あ、ていうか、あったあった!」


その声につられて、酒井くんと一緒にスマホの画面を覗きこむ。
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