腹黒エリートが甘くてズルいんです

「いや、普通この文面見たら結婚するのかと思うだろ？ お前、結婚したいしたい言ってたんだし」


酒井くんがスマホのディスプレイをかつかつと爪で叩いて主張する。


「そんな、女の幸せが結婚だけみたいなこと言い出したら、男女平等を謳う団体にフルボッコにされるよ？ あたしは、何も、結婚することだけにこだわらなくても幸せになれると思ったの！」


思わず同じトーンで言い返す。


「……じゃあ何、これはもう純粋に、４月から新しい部署で頑張りますよ、ってだけの報告？」


「……そうだけど？ 会って詳しく説明したかったのに、もう次に会ったら暇潰しだったとか言われてそれどころじゃなくて……」


あたしの言葉が終わらないうちに、酒井くんが大きな声を出す。


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


そして、そのまま勢いよく、どさりと後ろに倒れこむ。固いベッドマットが揺れて、あたしの身体もふわりと浮いた気がした。

全身が軋むように痛み、思わず息を飲む。
おーい、あたし、満身創痍なんですけど。