腹黒エリートが甘くてズルいんです
スマホもベッドに投げ出し、天井を仰いだまま動かない酒井くん。


沈黙が部屋に流れる。あたしの存在、まるごと無視されていますけど。

えーっと?


て言うか、そういえばあたしかなり衝撃的なこと、言われたような。


酒井くん、あたしのことが好きだとか言わなかった?

もしかして……


「ね、もしかして……あたしが、誰かと結婚しちゃうと思って、焦った、とか……? なんてね、あり得ないか、あははは、は」


口にしてみるとそれは中々インパクトのある内容で、どんだけ自意識過剰だよ! と自らを突っ込まずにはいられなくて。
乾いたあたしの笑い声が、力なく部屋に響く。


ちらりとみた酒井くんは両手の甲をそれぞれの瞼に置くような形でじっとしていて、あたしの言葉なんて耳に入っていないようだった。


「ただの勘違いでこんだけ振り回されるとか……子供かよ……」


暫くの沈黙の後、酒井くんが呟く。
さっきの姿勢のままだから、表情は全く読めないものだから、あたしはただその姿をじっと見つめるしかなくて。
< 205 / 227 >

この作品をシェア

pagetop