腹黒エリートが甘くてズルいんです
その仕草を見て、何を勘違いしたのか、酒井くんが慌てている。


「いや、女癖悪いっていうか、いや、あの、マジか。あーじゃあごめん昨日はなんかお前、嫌がってると思って、なんか、引き離しちゃった?そしたら悪かった……でもさ、あいつはちょっとさ……」


ふ、ふ、ふ、と笑いが止まらない。
酒井くんの勘違いを早く訂正したいけど、とりあえず呼吸を整えないと喋れない。


シーツから顔を離し、まっすぐ酒井くんを見る。


「昨日は、助けてくれてありがとう。凄く怖かったから、嬉しかった。あたしは、酒井くんが好き。ついでに、中学生の頃なんて、大好きだった」


「……へ?」


酒井くんがポカンとしている。そんなときの油断した顔は、昔から変わらないなと思う。

あんなに、みんなのキラキラ輝く王子様的存在だったのに、こうしてみるとまるでごく普通のイケメン。いや、普通のイケメンってなんだよって話だけど。
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