腹黒エリートが甘くてズルいんです
「いや、ちょっと待って、その言い方だと、昔の方が好きだったとかそういうこと? いやー、俺前も言われたんだよね、昔の友達にバッタリ会ったときに、すっかりお前も王子オーラ消えたなとか言われて地味に傷ついてさー 」


しゅんとなる酒井くんがあまりにもかわいくて、抱き締めたくなってしまう。


「違う違う、昔は確かに、物凄かったけど。今の大人になった酒井くんも、かっこ……っ、」


言い終わる前に、酒井くんの身体が柔らかくあたしに覆い被さる。
ごく自然に、キスをしていて。


「……、ん、……はぁ」


そっと遠慮がちに合わさっていた唇が、段々激しく重なり、合間の息継ぎが苦しくなってくる。


状況的にちょっと、これまずい、っていうかここ、ベッドの上だし! と微かに残る理性で考えたとき、ふと身体にかかる重みが軽くなった。


唇を僅かに離した状態で、酒井くんが囁く。


「……駄目だ、この状況、全然止まれる自信ない」

吐息と共に漏れる言葉は、あたしにも魔法をかける。
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