猫の湯~きみと離れていなければ~

けれど、そこを陽向にガッチリと捕まってしまい、意思とは反して強制的に「ごろにゃーん」と鳴かされだした。


「鈴、今日の約束覚えてる? 」


猫を飼っているだけあって、扱いに慣れている陽向は、片手間に副会長を弄びながら聞いてきた。

祥子は話に入るべきではないと気を配ってくれたみたいで、席をはずしてくれた。


「うん、覚えてる」


『会わせたい奴がいる』って話だよね。

それは多分、鳳凰様の流のことだと思う。


「病み上がりだし、時間ないって言ってたから今度にしてもいいけど? 」

「ううん、大丈夫。それにね、わたし…、わたしね……」


なかなか言い出す勇気がでない。


「ん? なんだよー? 」


「……陽向にね、話したいことがあるの」


やっと言えたけれど、今度は急激に不安になってくる。

ついてきてほしくて、副会長をちらっと見たけれど、まったくこちらの話を聞いているような状態ではなかった。


「なに? 何の話? 」

「…そのとき話す。だから、今日は一緒に帰ろ? 」

「今日も、だろ?」
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