猫の湯~きみと離れていなければ~
「ってかさー、なんで鈴は全然遊びに来なかったんだよ? 俺さぁ、嫌われたのかと思っててずっと寂しかったんだからなー」
陽向は長いポテトを1つ摘まむと、いじけたように振り回しはじめた。
「…それは、」
あいさつの練習ばかりに気を取られていて、その理由を考えてはいなかった。
陽向が納得するような、不自然じゃない答えを見つけなきゃ。
そう思えば思うほど頭が真っ白になってしまって、答えが見つからなくなる。
「うわ、沈黙じゃん。…え? ……俺まじで嫌われてる? 」
「違うっ! 」
思わず大きな声を出してしまった。
陽向は驚いた顔をしている。
やだ、わたしってば何を言っているの?
どうしよう、このままじゃ変に思われてしまう。
「ごめん、幼なじみを嫌いなわけないでしょ。でもいろいろあって、…ごめんね」
ごまかしたくて、思わず自分の口から出た『幼なじみ』という言葉が都合よく感じてしまう。
「まーた謝る」
「え? 」
「謝るのクセなの? なーんか鈴の謝り方ってバリア張られてるみたいで寂しくなるんだけどな」
「…えっと、」
そんなこと初めて言われた。
でも確かに口ぐせになっているし、そのとおりかもしれない。
それ以上は入ってこないでっていうバリア……。
「で、その『いろいろ』はいつか聞かせてくれんの? 」
何も言えなくなってしまったわたしから目線を外さずに、陽向はポテトを口に放り込こんだ。