感染学校~死のウイルス~
「……なんだか、悲しいね」


あたしは膝を抱えてそう言った。


「悲しい?」


「うん。人ってこんな極限状態にならないと、本心を言えないのかな」


「愛莉……」


空音が眉を下げてあたしを見た。


普段から言いたいことを言っているつもりだけれど、それでも自分の中で制限を付けていたり、オブラートに包んでいたりする。


そうしないと相手を傷つけてしまうし、自分自身を傷つけてしまうからだ。


そうやって自分の言葉をすべて言わないことが当然になっていたけれど、こんな状況になってようやく本音を言えるなんて、とても悲しいことだった。


「あたしは空音のこと大好きだよ」


「なによ、急に」


空音が照れたように頬を赤くする。


告白しているわけじゃないのに真っ赤になってしまうのは、あたしが好きという気持ちを伝えたことがなかったからだ。


「あたしも、愛莉のことが好きだよ」


照れながらも、空音がそう言う。


あたしも恥ずかしくなって空音と同じように顔が熱くなっていくのがわかった。


「後悔しないように、伝えとかなきゃね」


あたしがそう言うと、空音は顔を染めながらも寂しそうにほほ笑んだのだった。
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