派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~




 さて、急いで帰ろう、と思っていると、石井奏汰(かなた)という隣の部署の男に出会った。

 渚のように凄いイケメンというわけではないが、爽やかで話しやすい。

「あ、お疲れ様でーす」
と言うと、

「もう帰り?
 いいなあ」
と言ってくる。

「そうですか?
 早く帰れるより、遅くても、ボーナスある方がいいですよ。

 あいたたたですよ」
と顔をしかめて見せると奏汰は笑った。

 今まで当然のようにあったものが急になくなるのは辛いからな、と思っていると、
「なんか、上司にビールかけて辞めたんだって?」
と奏汰は笑う。

 また広まってるな、と顔をしかめた。

 何処のどいつだ、言って歩いてるのは。

「セクハラ?」
と訊いてくるので、

「違います。
 彼は……私に絶対に言ってはならない一言を言ったんですよ」
と言うと、

「な、なんか怖いよ、秋津さん」
と怯えたように言ってくる。
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