派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「まあいいや。
 渚をよろしくね」
と行こうとした脇田の手首を誰かがつかんだ。

 細い指先。
 振り返ると、やはり、蓮だった。

 平然とした顔で振り返ったように見えたかもしれないが、そんなことはなかった。

 離して、離して、秋津さーんっ、と心の中で絶叫しながら、普通に会話を続ける。

 我ながら、滑稽だ……と思っていた。






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