派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「お前も帰れ。
 それから、しばらく此処には近づくな」

 真面目な顔で言う渚に、そういう顔をしていたら、好みでないこともないんだが、と思ってしまった。

 なんなんだろう、この人。
 産業スパイとか。

 此処で、データの受け渡しをしてるとか……。

「違うぞ」

 まだなにも言っていないのに、こちらの目を見て、そう言ってくる。

 ひいっ。
 超能力……

「超能力者でもない」
と先へ先へと読むように渚が言った。

 額に指先を当て、小首を傾げるようにして言う。

「何故だろうな。
 会ったばかりなのに、お前の考えそうなことがわかるんだよ。

 相性がいいのかもな」

 ……悪いと思います。

「じゃ、じゃあ、失礼しますねっ」

 去れと言ってくれているのだから、今がチャンスだ、と後退し、蓮は倉庫のドアを開けた。

「じゃあな、蓮子」
と渚は軽く手を挙げてくる。

 なにをしても、いちいち様になる男だ。

 確かに産業スパイはないかな、と思う。

 目立ってしょうがないから。
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