派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 だが、その目立つ男を社内で見かけないのも不思議だ。

 それから、蓮子の子はいりません……と思いながら、エレベーターまで行ったとき、脇田がエレベーターから降りてきた。

「ああ、秋津さん、ちょうど良かった。
 今、総務に行こうと思ってたんだ。

 クリアファイル、20枚くれるかな」
と言われたので、

「あ、はい」
と返事をしながら、備品倉庫を振り返っていると、

「どうかしたの?」
と脇田は訊いてくる。

「いえ、この間お金借りた人が備品倉庫に居たので、何処の部署か訊いておこうかと」

 そうだ。
 それを訊けばよかったのだ、と今、秘書の脇田を見て気がついた。

 渚のペースに巻き込まれて、またうっかりしていたようだ。

「でも、大丈夫です」
と言うと、蓮の手に書かれている数字がチラと見えたのか、脇田が問うてきた。

「どうしたの、それ?
 電話番号かなにか?」

 はは、と笑って、隠すように手を握ると、
「モテるね、秋津さん」
と言ってくる。
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