派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「これ、あとで、脇田に渡してくれ」
とメモを渡してくる。

「あ、はい」
と受け取ると、

「どうかしたのか?」
と訊いてくる。

「ああ、いえ。
 なんでもないです。

 渚さん、今日は……」

 なんでもないです、と繰り返したが、渚は、
「今日も行くぞ。
 拒否はなしだ」
とよく考えればひどいことを言ってくる。

 だが、今はそれが嫌ではなかった。

「はい、待ってます」
と言うと、渚は少し驚いた顔をした。

 待ってます、というか。

 待っていたくはないような。

 そうでもないような。

 うーん、と思っているうちに、渚は去り、脇田が帰ってきた。

「脇田さん、社長からです」
とメモを忘れずに渡す。
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