派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「……飛び出したのは、就職して、一年経ってからです。

 和博さんと結婚しろと言われたので」

「ちょっといいか?」

 はい、と俯く。

「つまりお前は、親の威光もあって、一流企業に就職し、自宅から、悠々通っていたわけだ」

 そこを突かれたくなかったな~と思う。

 コネを使ったわけではないが、履歴書も書いてるし、あの親の子供だと知らなかったはずはない。

 実際、社内で、専務に、お父さんはお元気ですかとか言われたこともあるし。

「何処が自立してんだ?」

 ……ですよね。

 しゅん、とすると、渚は、軽く蓮の後ろ頭を叩いたあとで、
「ま、俺が言えた義理じゃないが」
と言い出した。

「えっ?
 渚さんは自立してますよ。

 渚さんのお爺様は、可愛い孫でも、実力もないのに、社長に据えたりしない方だと伺ってますし」
と言うと、少し照れたような顔をしながらも、

「まあ、それはお前も同じだろう」
と言う。
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