派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 いやあの……なにも着る気はありませんし。

 それ、私にとって、自立になるんですかね? と思っていると、
「お前は親に押し付けられたんじゃなく。
 自分で俺という立派な夫を捕まえたんだ。

 誇っていいぞ」
と言ってくる。

「あの……その、ちょいちょい自分を持ち上げてくるのはなんなんですか」

 だが、渚は相変わらず、人の話を聞いてない。

「だいたい、お隣みたいな家庭が作りたいって。

 お隣が穏やかで普通だってなんでわかる?」

 家の中まで入ってみないと、内情はわからないぞ、と言う。

 まあ、それはそうかもしれない。

 うちだって、外からみたら、理想の家庭だったろう。

 お金と安定した地位があって、娘の口から言うのもなんだが、ダンディで人前に出しても恥ずかしくない父親。

 家柄が良く、如何にもなやり手の美しい母親。

 ……どっちもあんまり見かけないので、顔を見るたび、新鮮だが。
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