派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 そんな莫迦な、と思ったが、秘書の習性か、勝手に口を挟むのも憚られる感じがして、黙っていた。

 いや、ちょっと、今のセリフが気になって、黙ったのもあるが。

 新しい男ってことは、やっぱり、前が居たってことか? と思ったのだ。

「こいつは、あの課長代理より、諦め悪いかな?」
と和博は言ってきた。

「あの人は関係ない。

 それから、和博さん、もう私と結婚する話は諦めて。

 貴方が好きとか嫌いとか考えたこともない。
 従兄弟だし。

 一緒に育ったし。

 貴方もそうなんじゃないの?

 なのに、貴方が私と結婚したいと思うのは、単に、お爺様の後を継ぎたいからでしょう?」

「相変わらず、おめでたいな、蓮」

 和博は蓮の髪をつかみ、自分の方を向かせる。

「金も女もいるに決まってるじゃないか」

 ……ス、ストレート過ぎる。

 或る意味、渚より怖い、と思っていた。
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