派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 蓮に言うと、
『そんなことないですよー』
と笑うのだろうが。

 秋津さん、絶対、人のこと、悪く言わないからな。

 だから、彼女は、婚約者のこともそんなに悪くは言わないけど、実は相当困った男なのかもしれない、と思ったとき、それは雨の中現れた。

 どうしよう。
 絵に描いたような、ボンクラそうなイケメンが目の前に居るんだが……。

 案の定、彼は蓮を見ていて、蓮も足を止めている。

「このボン……

 失礼。
 この人、もしかして」
と小声で蓮に訊く。

 蓮は彼を見たまま頷いた。

 育ちがいいせいか、意外にセンス良く質のいい服を着こなしているのだが。

 なんだろう。
 顔がいけ好かない、と言うか。

 何処か気障ったらしい。

 同じようにお金持ちのお坊ちゃんでも、やりたい放題でも、何処か生き方にストイックさを感じる渚とは正反対な感じだ。

「やあ、蓮」

 雨の中、男は蓮に笑いかけてくる。

「最近、新しい男が出来たって聞いたけど。
 こいつがそう?」
とこちらを見て、訊いてくる。
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