派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「なんでだ」

 さっき、傘に入れてもらって送ってもらった、と言うと、
「……その莫迦兄貴より、脇田の方が安心ならんな」
と呟いていた。

「おい。
 今から、電話して、和博とやらに、お前の恋人は俺だと言っておけ」
と言い出すので、なんでですかっ、と叫ぶ。

「いや、脇田さんは違うとは言いますよ。
 なにかあったら、申し訳ないですから。

 でも、渚さんの名前を出したら、必ず、渚さんにご迷惑をおかけしますよ」
と言うと、どんな男だ、と呟いていた。

「まあ、俺は対丈夫だ。
 その和博とやらが、俺に近づいたら、逆に捻りつぶしてやるから」
と渚は不敵に笑う。

 確かに。
 渚と和博では、ライオンと仔犬。

 下手したら、ライオンとねずみくらい格が違う。

 だが、ライオンもねずみに噛まれて痛くないはずはない。

 忙しい渚に、自分のことで、迷惑などかけたくはなかった。
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