派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「近くのコンビニで私が買ってきますよ」

 いや、いいよ、とすぐに脇田が言ったので、もしかしたら、この近辺では、あの店にしかないのかな、と思った。

 そういえば、自分もあそこで買ったし。

「脇田さん、まだ時間大丈夫ですか?」

「え」

 蓮は、まるで、旦那、いい品入ってますぜ、という密売人のように、顔を寄せ、小声で言う。

「あげます、このゼリー。
 うちに一個あるんです、実は」

 脇田が笑った。

「いや、いいよ」

「いえ、申し訳ないので。
 すぐ取って来ます。

 マンションすぐそこですから」
と蓮は道を挟んで目の前にある大きなマンションを指差した。

 それを見上げて、脇田が言う。

「このマンション、賃貸?」
「はい」

「あの、今の派遣のお金で維持できてるの?」

「……ブルーになるようなこと言わないでくださいよ」

 ただいま現実逃避中です、と蓮はおのれのマンションを見上げ、訴えた。




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