派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 いや、あまりに落ち着き払っているので、なんとなく、既婚者のような気がしてしまうのだ。

 そういえば、秘書室の人ってみんな落ち着いてるよな、と気がついた。

「そう。
 だからさ、こんな簡単に独身男を部屋に上げない方がいいよ」

 そう言ってくる脇田に、
「大丈夫ですよ、脇田さんは」
と言うと、なにを根拠に、と苦笑いされる。

「いや、モテそうなんで。
 あのいきなり人を孕ませようとする悪霊とは違いますよ」

「悪霊?」

「今日言ってた私がお金借りた人ですよ」
とコーヒー用のポットに水を入れながら言う。

「よく考えたら、あの人、変なんですよ。
 他の人が居るときには、現れないんです。

 もしかして、備品倉庫に居る地縛霊だったりして」

「いやあの……社食でも会ったって言ってなかった?」

 そういえば、明るい太陽の下でもあったな、と思い出す。

「そもそも、悪霊、お金貸してくれないでしょ」
と言われ、それもそうだな、と思った。
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