派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 



 悪霊が居ますよ、真っ昼間から。

 昼前、何の気なしに、給湯室から駐車場を見た蓮は、何処かで見たような背格好の男が、あの郵便局の方を向いて、煙草を吸っているのを発見した。

 一度、デスクに戻り、160円を掴むと、ちょうど、警備員室に持っていく備品があったので、それを手に一階まで降りる。

 備品を掴んだまま、駐車場に駆け出すと、ちょうど、渚が振り向いた。

「おお、蓮子」

「蓮ですっ」
と息を切らして、膝に手をつく。

 早くしないと、また消えてしまうかもしれないと思ったから、猛ダッシュしたのだ。

 しかし、悪霊はないな、と地面を見ながら、蓮は思った。

 こんな煙草臭い悪霊にはあったことがないから。

 いや、そもそも、霊にあったこともないのだが。

「どうした? またアイス奢ってやろうか?」
と言ってくるので、

「奢ってもらってないじゃないですか。
 はい、160円」
と渚にお金を差し出すと、渚は忘れていたのか、なんだ? という顔をしたあとで、一度受け取り、蓮の掌にそれを載せてきた。
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