グリーン・デイ
父は身体を起こそうとした。僕はそれを慌てて止めた。
「寝たままでいいから。」
しかし、頑固は変わっていないようで、勝手に電動ベッドのスイッチを操作して、父の弱弱しい身体がウィーンという機械音と共に徐々に起き上がってくる。
「……よく来たな。」
僕はただ頷くことしかできなかった。しかし、無理矢理平静を装った。不安が父に知られ、そのまま移ってしまうかもしれないし、何よりどこか恥ずかしかった。
「母さんは?」
「母さんなら帰った。すれ違わなかったのか?」
「うん。軽トラで来た。」
「そうか。」
こんな短くて、何気ない会話だったが、傍から見てもどこかぎこちなかったように思う。少なくとも親子の会話ではない。どこか他人行儀で、お互いがお互いを探り合っているような感覚だ。
父は元々が寡黙な人で、家でもあまりしゃべらなかった。腕組みをし、煙草を吸い、縁側に座って日本酒を呑む。この三つの仕草のローテーションのような生き方をしていた。
だから仕事の愚痴は絶対に言わない。言わないが、きっと仕事のストレスは溜まっていたはずだ。それを吐き出せず、抱え込んで、こうなったのかと思うと、不憫でならなかった。
それと同時に、僕もこのストレスに繋がるようなことをしてしまったのかと思うと、思わず涙ぐみそうになった。僕が父を殺そうとしていたのかもしれない。僕のような息子が生まれなければ、きっと父はこうはなっていなかった。