グリーン・デイ





 アヤカは確かに僕に訊いた。これを恋だと思っていいのかと。その返事は迷うことなくNOだった。理由はさっきと同じで、現実世界では起こり得ない事象だからだ。



 ただ、これがもし、どこかの幻想世界の事象だとしたらどうだろうか。それなら十分にあり得る話だ。例えば、ここが小説家によって作り出された世界だとして、ストーリーを動かすために、不自然な流れをこういうセリフを入れることによって、僕たちの出会いを違和感なく描こうとしているだけだとしたらどうか。



 現に今まさに、現実世界ではあり得ない事象がこうして起きている。他人と目が長く合うということで。つまり、その瞬間から僕はすでに誰かの描いたストーリーの中の幻想世界へ引きずり込まれているのかもしれないと思った。そして、ここが本当に幻想世界だとしたら、こう答えるのが正解だろうと思った。



「いいよ。恋と思っても。」



 そして、この瞬間から、僕はこの幻想世界を受け入れた。




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