心に届く歌
「ドク、良いかしら」
「どうぞお嬢様」
ドクが部屋にいる時間帯は、予(あらかじ)め紙に印刷して貰っている。
だから部屋を訪ねてドクがいなかったことは1度もない。
ロッキングチェアに座り本を読んでいたドク。
わたしは近くの椅子に座り、本題にはいる。
「ドク。
どうしてシエルが学校に行っていたこと、調査書に書かれていなかったの」
「今シエル様のことを調べてくれた方に聞いております」
ドクがそう言った時だった。
部屋中に黒電話みたいに高い音色の着信音が聞こえる。
このやけに大きな音はドクのスマートフォンが発する音。
うるさくて耳を塞ぐも、ドクは気にせずスマートフォンを操作し、耳に当て会話を始める。
どうやら電話で、相手はシエルのことを調べた情報屋のようだった。
「……わかりました。ありがとうございます」
ドクは電話を切りスマートフォンを元あった机の上に置くと、わたしを見た。
「わかりましたよ。
何故調査書にシエル様が学校に行ったと書いていなかったのか」