心に届く歌

「いるのか？
じゃあ連絡した方が……」


「……後で連絡しておくわ」


「エルちゃん？……どうした？何か可笑しいぞ」




エルちゃんは結構顔に出やすい。

嬉しいことも嫌なこともすぐ出てしまう。

対してドクさんは冷静沈着でいつだって笑っているけど、今は動揺を隠しきれていないようだった。





「エルちゃん？」


「……シエルの家、少し複雑なの。
だからあんまり、シエルの前で家族について言わないでちょうだい」


「…………」




俺はさっき寮でシエルの両親について聞いたことを思い出す。

あの時シエルは何も言わなかった。




「……待てよ。
複雑な家庭なのにここにいるのか？

ソレイユ家に仕える家は、由緒正しい清らかな家のはずだよな？

複雑って聞くと、清らかなイメージ全くねぇんだけど」