心に届く歌
何せ王家のソレイユ家だ。
仕える家は相当なお金持ちだ。
今日のシエルの行動を思い出す。
今日の午後の問題。
数学だってその後の問題だって、シエルは基本的なこと以外何ひとつ答えられなかった。
ペンを走らせる音が響く中、シエルだけペンが全く動いていなかった。
すでに問題を解き終えていた俺は、シエルに教えるため席を立った。
あの問題、ソレイユに仕える家出身であれば、解けて当然なはず。
だけどシエルは書くことが出来なかった。
「エルちゃん……シエルって何者だ?」
「…………」
「ドクさんも知っているんだろ?」
「…………」
ふたりして黙り込む。
俺は戸惑いを隠せなかった。