心に届く歌







「……アンス」




吐息交じりの声が聞こえ、振り向くと。

シエルが顔をしかめながら上体を起こしている所だった。

すぐさまドクさんが駆け寄り、シエルの背中を支えた。




「駄目です、もう少し寝ていなくては」


「……はいっ…」




起こした上体を横にさせるシエル。

そして俺を見て、もう1度「アンス」と呼んだ。




「お願い……それ以上、エル様とドクさんを困らせないで…」


「シエル……?」


「っ!けほけほっこほっ!」


「シエル!大丈夫なのか?」




激しく咳き込むシエルに近づくも、手で制される。




「シエ……」


「ごめん。
送ってあげたいけど…難しいみたい。

教科書運んでくれてありがとう……」




シエルは目を瞑り、苦しそうに息を吐く。

俺は「お大事に」と声をかけ、「それじゃ」と部屋を出た。





無理に聞くものじゃない。

今度、直接シエルの口から聞こう。





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