心に届く歌
☆エルside☆
「ドク、シエルを診ていてちょうだい。
わたし、アンスを玄関まで送ってくるわ」
ドクが頷いたのを見て、わたしは廊下に出てアンスを追いかける。
「アンス!」
「エルちゃん?」
「玄関まで送らせてちょうだい」
「玄関まで行けるけど……わかった。久しぶりに話すか」
わたしたちは並んで玄関までの長い廊下を歩いた。
「この家、久々に来たけど変わってねぇな」
「わたしも両親も、気に入っている設計だから」
「サンキュ」
「アンスを褒めたんじゃないわ。
褒めたのは有能な建築士だったあなたのお祖父様よ」
アンス・クザン。
ソレイユ国では知らない者はいない、有能な建築士一家の跡継ぎ息子。
この家も寮も中心街に佇む噴水も、大きな建築物は全て、クザン家の作品だ。
そして過去には、わたしの婚約者だった人でもある。
「懐かしいなー。
エルちゃんと婚約者だった頃、よくこの家遊びに来てたなー」
「かくれんぼしていたわね。懐かしいわ」
「でも探すの超大変だった。
この家が広すぎて、隠れる場所多すぎて」
「隠れるのも大変だったわねー」
幼い頃の話をし、わたしたちは盛り上がる。