心に届く歌
「今のエルちゃんが、幸せそうだったから」
「え?」
「素敵だよエルちゃん。
エルちゃんが俺と婚約者って関係だった時に、今のエルちゃんだったら、俺は絶対に好きだって告白してた」
「アンス…?」
「成長したねエルちゃん。…シエルのお蔭かな」
「シエル…?
どうしてシエルの名前が出てくるの?」
「エルちゃんは間違いなく綺麗になったよ。
お世辞じゃなくて、本当に俺はそう思う。
幸せになってね、エルちゃん」
「ちょっ、アンス!!」
アンスは出て行ってしまった。
何故か、シエルの名前を出して、理由も話さずに。
「何なの…綺麗になったって」
わたしはあの頃より背が高くなっただけなのに。
少しだけお化粧を覚えたとはいえ、大きく変わった点はないのに。
久々に再会して、美化された?
「……美化されたのなら、それ幻想よね?
お世辞じゃないって言っていたけど、
本当はお世辞だったりするんじゃないの~?」
わたしは独り言を漏らしながら、部屋へ戻った。
ありがとう、アンス。
わたしのこと、好きになってくれて。
わたしの幸せ、願ってくれて。
本当に……ありがとう。