心に届く歌







「へぇー。金持ちはやっぱり違うわね」




本家の廊下を歩きながら、彼女は感想を漏らす。

さっきからベレイくんは黙り込んだまま、彼女の後ろを歩いている。

時折彼女を見つめる瞳が、妖しく輝く。




「そういえば、あの後あんたどうなったの?」


「あの後……?」


「“儀式”が終わった後よ。
いつの間に地下室を出ていなくなっていたの?」


「……地下室に外へ通じる扉を見つけたから、そこから外に出て、倒れたんです」


「それで?どうしてここで執事なんてしているの?」


「……倒れていた僕を救ってくれたのが、エル様でした」


「エル様って…正統王位継承者のエル様?」


「はい……。
あの時、お父上である国王様と一緒に、ご主人様主催のお茶会に来ていたことをご存知ですか」


「覚えているわよ。
あんたが問題を起こした日だものね」


「……エル様が、雨の中倒れていた僕を、助けてくれて、こうして執事として恩返しのために働かせていただいています」


「……まるでおとぎ話みたいね」


「僕もいまだ信じられていません……」


「……その幸せ、ぶち壊してあげようか」


「え?」




僕はその場で立ち止まった。

僕より数歩前に出た彼女は勝ち誇ったように笑っていた。





< 267 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop