心に届く歌
「アタシたち5階に住んでいるんだけど、5階は駄目。
狭くてすぐ荷物で足の踏み場がなくなって嫌になる。
それなのにこの部屋は何?
物が少ないくせにただ広すぎる部屋なんて用意されて。
正統王位継承者の第1執事は良いご身分ね」
「……もっと頑張れば、あなたも良い部屋になれますよ」
「あんたは頑張ったの?」
言われて気が付く。
僕は自然とこの部屋に通された。
他の部屋と差があるなんて知らなくて。
初めて自分だけの空間が貰えたことで嬉しくなったことしか覚えていない。
僕の、努力じゃない。
「まぁ良いわ。案内しなさいよ」
「……はい」
僕は嫌な予感が的中したことを知った。
彼女が現れたことで、何か引き起こさなければ良いのだけど。