心に届く歌
「……大丈夫?シエル」
「ごめんなさいっ…本当に申し訳ありませんでしたっ…」
変わったと思ったのに。
あんな簡単に自我を失うなんて。
まだまだ僕は……臆病者だ。
「ひとまず座って。お茶でも飲みましょ?」
「お、お茶、僕が淹れます」
「良いから。シエルはアンスと一緒に座ってて」
後ろからアンスにクイッと腕を引かれる。
僕は引かれるままソファーに座った。
「エルちゃん特製緑茶よ、召し上がれ」
「おーサンキュ、エルちゃん」
「…いただきます」
夏にぴったりな冷たい緑茶を一口飲む。
仄かな苦みと冷たさが、暴走してしまった気持ちを抑えてくれた。
「苦っ……よくこんなの飲めるなシエル」
「美味しいよ…凄く美味しいよ」
「良かったわ。さ、アンスも飲みなさい」
渋々お茶を飲むアンス。
苦さに顔をしかめる度、僕はクスクス笑った。