心に届く歌






「どうして、プーセと結ばれろなんて言ったの」

「…………」

「あんなに好きだって言ってくれたのに、どうして」




あなたを離したくない。

シエルは熱で赤くなった顔をして、必死に想いをわたしに伝えてきていた。

あんな必死なのに、結ばれろなんて言うのは、矛盾している。




「……プーセさんと、約束したんです」

「約束……?」

「はい。
僕がエル様にプーセさんと結ばれるよう言ったら、プーセさんはエル様一筋になると」

「……プーセが…?」

「僕じゃあなたを幸せにすることなんて出来ない。
ですから、何もかも全て持っているプーセさんに、エル様が幸せになるようお願いしたのです」




わたしを幸せにしたいから、シエルはあんなことを……。



「でも僕も駄目ですね……。

あなたとプーセさんが並んで笑う姿を想像するだけで苦しくなって、
間違えて足を踏み外して階段から落っこちるなんて。

その傷が原因で熱出して、僕がセッティングしたのにエル様を呼んでしまって」

「わたしを呼んだ……?」

「階段から落ちて、すぐに他のメイドさんや執事さんが気付いてくれて。
寮まで運んでいただいて、ドクさんの手当てを受けている時に、すっごくエル様に会いたくなって。

気付いたらドクさんに、エル様を呼ぶよう言ってしまいました。

ドクさんは僕の手当てをしていたので、ドクさんがメイド長さんに頼んでエル様を呼んでもらいました」



シエルは自嘲気味な笑みを浮かべる。




「ここに来てから、僕の体調が悪くなると、必ずエル様は僕の傍にいてくれました。
いつも傍にいてくれるあなたが傍にいないと、一気に不安になっちゃうんです。

矛盾していますよね……僕の行動。

幸せになってもらいたいから突き放したのに、
不安だから隣に来てもらいたいなんて。

本当は……出来ることなら僕があなたを幸せにしたかった」




シエルはぎゅっと目を瞑った。




「ずっとずっと、憧れていたんです。
あなたのように僕も幸せになりたくて。

傍にいると、憧れを通り越してあなたの1番になりたいと今度は願ってしまった。

本ッ当……僕意思が弱すぎて……自分で自分が嫌になります」



シエルは目を開け、唇を噛みながら夜空を見上げる。

星はさっきと同じように瞬いていた。




「シエル……わたしだって、シエルが好きだよ。
シエルのこと、大好きだよ。

わたしの隣にいてよ、シエルっ……!」




ぎゅっと抱きつく。

わたしもシエルも泣いていた。

相手を想う気持ちが強くて、大きすぎて。




誰か、お願い。

わたしたちの恋を、叶えて。





< 477 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop