心に届く歌
「シエル……これは」
「月の真珠のことをアンスから言われた時、驚きました。
特徴がそれと全く同じでしたから」
「じゃあこれが………」
「確信はありません。
紺色の紐に真珠なんて、探せばどこにでもあるような組み合わせです」
……確かにシエルの言う通りだ。
虹色の紐とか、そんな珍しい色ならば確信が持てたかもしれないけど。
紺色なんてどんな色にも似合いそうな色ならば、確信は持てない。
「お母様に見せてみればわかるんじゃないかしら」
「……見せてどうするんです?」
「え?」
「もしもの話ですけど、イヴェール様にこれを見せて、僕が実はリュンヌ王国の王子だとします。
そうしたら……あなたはどうしますか?」
「どうするって……決まっているでしょ。
すぐさまわたしと結婚よ」
「先ほども言いましたけど、探せばどこにでもありそうなネックレスです。
偽装したのだと言われても反論は出来ません」
「施設に来た時身につけていたものなんでしょう?
だったら偽装なんかじゃないわ」
「ネックレスそのものが偽装だと疑われたら、その話も作り話だと思われます。
証言してくれる施設長さんは亡くなっていますから」
わたしは何も言えなくなる。
シエルは息を吐いた。
「偽装したと思われたらもうおしまいです。
村出身ですから、お金目当てで偽装して話しを作ったと思われ、あなたと会うことも許されなくなるかもしれません」
「そんなの嫌だっ……」
「僕だって嫌です」
シエルはわたしの方を見る。
前髪を横に流しているから、シエルの素顔が見える。
「あなたと離れるなんて僕には考えられないんです。
だから、僕はずっと、アンスが言った月の真珠とそれの特徴が合っていても、言わなかったんです。
どんな生活でもどんな身分でも良いから、僕はあなたの傍にいたいんです」
「シエ、ル………」
わたしはぎゅっとシエルに抱きつく。
シエルも緊張しながら、わたしを抱きしめ返してくれた。
「ですから誰にも、誰にもネックレスのことは言わないでください。
ずっとずっと、これからも隠していきますから」
わたしはシエルから離れて、ネックレスを返す。
シエルは真珠を前にして頭に紐をかけると、前髪をおろして真珠も目も隠した。
「それじゃ、僕はこれで……。
夜遅いのに話してしまい申し訳ありませんでした」
「気にしないで。……そうだ、ひとつ聞いても良いかしら」
シエルはきょとんと首を傾げた。