地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜



「今、山岡主任の事を考えてたろ?俺と居る時にアイツの事なんて考えるな!」


どうして山岡主任の事を考えてたってわかったんだろ?


それにアイツって……。


「そんなの関係ないでしょ?それに笹山くんは山岡主任の事が嫌いなの?」


「ああ、嫌いだ!本当に最低な奴だし、仕事は確かに出来る奴だけど、人としては嫌い」


「どうして?あんなに優しくて、気も利くし、大人で頼りがいもあって周りに信頼されるのに……」


「玲美はさ、好きだから気づかないだけかもしれないけど、俺の本当の姿も気づかなかったのに、アイツの優しさとか、大人で信頼されてるなんて言いきれる?外面だけかもしれないだろ俺みたいに。人の心なんて誰にも読めないし、本当に優しくて、信頼される奴が不倫なんてするか?アイツの優しさに騙されてんだよ玲美は。兎に角、今はアイツの事は忘れろ」


そう言った後に笹山くんはトイレに行ったのか席を立った。


彼にそう言われて言い返せなかったのは、彼自身が見た目とギャップがありすぎて、私も真面目で地味男だとずっと思って気づかなかったし、彼の本性がわかって、人は見た目じゃわからないことを知った。


凪も笹山くんと同じような事を言ってたけど、そう言われても、いつも優しい山岡主任に裏の顔があるなんてやっぱり思えない。


一人で考えていると笹山くんが席に戻って来て、数十秒後にデザートが運ばれてきた。


そのお皿には【アイツより俺を好きになれバカ】と書いてあった。


何食わぬ顔で私の反応を見ていたが、何だかおかしくなって笑いがでてしまった。


「ふふふっ。何よ、コレ?喧嘩売ってる?好きになんて絶対にならないから」


「大丈夫、好きに絶対になるから。さぁ早く食べて次行くぞ」


二人でデザートを食べた後はレストランを出て、近くの水族館に行った。




< 34 / 114 >

この作品をシェア

pagetop