地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
「ねぇ、やっぱり信じられないんだけどさ、どうして私なの?私なんかよりも綺麗で可愛い子なんて沢山いるでしょ?うちの会社で言えば山梨さんとか可愛いじゃない?」
「山梨とか吐き気するから名前も聞きたくない。あんなぶりっ子で腹黒な奴、俺嫌いなんだよ。それにどうして玲美がいいのかは、俺を好きになったら答えてやるよ」
「何それ……」
それに笹山くんは山梨さんみたいなタイプは嫌いなんだ。
私も苦手だけど……。
そして車を走らせてまず着いた場所は、海沿いにあるレストランだった。
夏場だからまだ少し明るくて、レストランからは海が見えた。
「気に入った?」
「え、う、うん」
「実はネットで調べて予約しといたんだ。料理も旨いらしいし」
「いつの間に予約してたのよ?」
「ん?月曜日にはしてたけど?」
そんな早くに予約してたなんて……。
それに彼はいつもと違って楽しそうで、真面目な彼と、意地悪な彼と、子供っぽい彼、色々な顔を持つ彼だけど、ギャップがありすぎて彼がわからない。
そんな事を考えていると料理が運ばれてきて、食べると本当に美味しくて、最初は複雑だったのに、今は自然と笑が溢れる。
もしこれが山岡主任とだったらもっと幸せなのかな?
こんな風に出掛けて食事なんて出来ない事をわかっているのに、一瞬そんな事を考えてしまうと胸がズキンと痛んだ。
別れられたら気持は楽になるかもしれない。
だけど好きな気持ちがそれを阻止する。
山岡主任の優しさが、別れの言葉を言えなくしてしまうから。