地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
陽はテーブルにピザを置くと、上着を脱いでネクタイを外した。
そして冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出すと、そのまま仁王立ちで缶ビールを一気に飲み干す。
「そんな所に立ってないで座ってピザ食べろよ。飲んでる途中だったんだろ?」
そう言われるままに私はテーブルに座った。
「俺の話をする前に一つだけ聞きたいんだけど、日曜日に玲美も水族館に行ったのか?」
その質問に私はコクリと頷いた。
「それは一人でだよな?」
その質問にもコクリと頷いた。
「そっか、なら安心した。じゃあ今から日曜日の事を話すな?本当は月曜日の夜に話したかったけど玲美の両親が帰ってくるからと言われて会えないと言われたから言えなかったんだけど、水族館に居た女性は俺の姉貴でその子供が一緒に居た啓太。義兄さんは仕事が忙しくて中々遊びにいけないらしく、啓太がどうしても水族館に行きたいと言ったみたいで俺を道ずれにされたんだ。出掛ける準備をしていたら突然現れてさ、啓太に行こうと泣きつかれたら断れなくてさ。姉貴は義兄さんが忙しいのは理解してるけど、啓太はまだ子供だからパパとも出掛けたいらしくて、パパが行けないなら俺と行きたいっていいだしたんだ。俺がちゃんと話せたらよかったけどあの日は急かされたからさ。ごめんな」
陽の話を聞いて私の勘違いだとわかるとホッとしたのか涙がポロポロと溢れてきた。
「玲美に言われた言葉を聞いて、山岡主任と俺がダブったんだろ?嫌な思いさせてごめんな?俺が好きなのは玲美だけだし、玲美しか興味ないから信じてくれ!」
そう言って私の涙を手で拭った。
「私こそごめん……山岡主任の事があって、水族館で陽達の姿を見たら頭が混乱しちゃって」
「誤解が解けたならいい、さぁ冷めないうちにピザでも食べようぜ」
「うん」
私達は缶ビールを飲みながら二人でピザを食べた。
だけど私はピザを食べながら考えた。
やっぱり私の気持ちを伝えた方がいいよね?
だけどいつ言ったらいい?
タイミングに悩んでる間にピザを食べ終えてしまった。