ブラッド
「まあ、そうだ。……だが、事件が発生して時間が経ってる以上、捜査が公になるのも知れてる」


 伊里町は持っていたカバンから、小型のペットボトルを取り出し、キャップを捻って口を付ける。


 中に入っているのは水のようだった。


 暑気で体の中から絶えず水分が失われる。


 駅前は人が多い。


 ここで夜間起きた金子雅夫撲殺事件は、目撃情報等が寄せられても、解決には難儀する。


 軽く背を伸ばし、捲れたネクタイを整えて、また前を見据えた。


 上下ともスーツ姿なので、暑い。


 汗だくだ。


「佐山」


「何ですか?」


「今から飯食わねえか?この近くに美味い蕎麦屋があるんだ。笊蕎麦だったら奢るぞ」



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