ブラッド
「いいんですか?」


「ああ」


 伊里町が頷き、視線を前へ向けて、歩き出す。


 黙って付いていった。


 蕎麦屋は街の繁華街の一角にある。


 小さな店だった。


 入ると、和服姿の女性ウエイターが案内してくれ、俺たちはカウンター席に座る。


 そして伊里町が笊蕎麦を二人前注文し、お冷を飲み始めた。


 いかにも一課の警部補といった感じで、貫禄はある。


 だが、伊里町もマル暴を極度に怖がっていた。


 それに従流会に対する捜査となると、怖気が振るうようだ。


 仕返しが怖いらしい。


 容疑者の篠原は、ほぼ常に下っ端を連れている。


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